ロービートを知り尽くしたカリスマ店の裏側に潜入!
アンティークウォッチを専門に扱う「ケアーズ」は、時計ファンから絶大なる信頼を置かれている。
理由は、店名にするほど"ケア"が万全だから。その工房は、アンティーク専門店ならではの工夫に満ちていた。
大量のストック・パーツでアンティーク時計を救済
アフターケアに由来する店名を持つ「ケアーズ」は、1989年の設立当初から修理工房を構え、技術を研鑽してきた。取り扱うのは、1970年代以前に作られたロービートムーブメント搭載モデルのみ。多くの時計メーカーでは、30年以上前の時計のメンテナンスは、修理ではなく修復扱いとし、本国送りとなる。またすでにパーツがないからと、修理自体を断られるケースも多い。ケアーズでは自店で販売した時計以外の修理も請け負い、修理を断られた多くのアンティーク時計を救済してきた。現在、工房では10名の技術者が日々、修理にいそしんでいる。
メーカーでも修理できない時計が直せるのは、設立以来、培ってきた技術に加え、様々なパーツを買い付けてきたから。さらに壊れて使い物にならなくなったムーブメントも、部品取り用に買い集めてきた。主な買い付け先は、やはりスイス⋮⋮ではなく、アメリカ。次いで、ドイツ。どちらも時計消費大国だから、修理用の交換パーツも数多く残っているのだ。そして修理部門を持つ時計店が閉店した際などに、ひそかに市場に流れるのだという。それらを次々と買い集めてきた結果、工房には、おびただしい数のパーツがストックされるに至った。歯車に香箱、主ゼンマイ、クロノグラフ用のハンマーや微細な押さえバネ、様々なサイズの穴石などなど。いくつも並ぶキャビネットには、キャリバー別やメーカー別にパーツや部品取り用のムーブメントが整理されている。その中には、未使用の純正品も数多い。「部品にはメーカー名が入っていないので、それが本物かどうかの目利きが必要」だと、ケアーズの川瀬友和会長は言う。
さらにストックされるパーツは、ムーブメント関連だけではない。針やリューズといった外装部品も含まれる。
こうした豊富なストックと、長年の修理の経験が、ケアーズの財産。多くのアンティーク時計ファンから、絶大なる信頼を置かれるゆえんである。